カスハラ対策義務化【2026年10月1日施行】|カスハラ対策法とは
最終更新日:2026年8月16日
結論:労働施策総合推進法の一部改正により、カスタマーハラスメント対策がすべての企業の法的義務となります。
法律によって主として義務を負うのは「事業主」(労働施策総合推進法第33条)であり、違反等に対して厚労省から勧告がなされたにもかかわらず従わなかった場合には、企業名公表の措置が予定されています。(労働施策総合推進法第42条第2項)
また、カスハラ防止対策を怠ったことによって従業員が精神疾患になるなどした場合、安全配慮義務違反として損害賠償義務を負うこともあり得ます。
どのような法改正なのか
2026年10月1日、カスハラ対策法が施行されます。
カスハラ対策法はどの法律を改正したものか
カスハラ対策法とは、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)等を一部改正したものです。
カスタマーハラスメントを防止するため、事業主に雇用管理上必要な措置を義務付け、国が指針を示すとともに、カスタマーハラスメントに起因する問題に関する国、事業主、労働者及び顧客等の責務を明確化しました。
法律上のカスタマーハラスメントの定義
なお、カスハラ対策法において、カスタマーハラスメントとは、職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者の言動であって、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより当該労働者の就業環境を害することをいうとされています。
具体的には誰が、何を義務付けられるのか
義務を負う者と義務の内容
| 義務者 | 内容 |
|---|---|
| 事業主(会社) | 労働者の就業環境が害されることのないよう、労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、労働者の就業環境を害する当該顧客等言動への対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置その他の雇用管理上必要な措置を講じる義務(法33条1項) |
| 労働者がカスハラに関する相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない義務(法33条2項) | |
| 他の事業主から当該他の事業主が講ずる雇用管理上必要な措置の実施に関し必要な協力を求められた場合には、これに応ずるように努めなければならない義務(法33条3項) | |
| 労働者の就業環境を害する顧客等言動を行ってはならないことその他当該顧客等言動に起因する問題(以下「顧客等言動問題」)に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる措置に協力するように努める義務(法34条2項) | |
| 自らも、顧客等言動問題に対する関心と理解を深め、他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない義務(法34条3項) | |
| 国 | (厚生労働大臣は)事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定める(法33条4項)。 |
| 当該顧客等言動問題に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、各事業分野の特性を踏まえつつ、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならない(34条1項) | |
| 労働者 | 顧客等言動問題に対する関心と理解を深め、他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる措置に協力するように努めなければならない(法34条4項) |
| 顧客等 | 顧客等言動問題に対する関心と理解を深めるとともに、労働者に対する言動が当該労働者の就業環境を害することのないよう、必要な注意を払うように努めなければならない(法34条5項) |
雇用管理上講ずべき措置
厚生労働省の指針が定める5つの措置
法によって求められる義務のうち、特に、事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関し雇用管理上講ずべき措置の内容が重要であり、厚生労働省のガイドラインに詳細が記載されています。
- 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
- 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 職場におけるカスタマーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
- 職場におけるカスタマーハラスメントへの対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置
- ①~④までの措置と併せて講ずべき措置
施行までに必須となる2つの準備
これらのうち、②についてはカスタマーハラスメント相談窓口の設置が、④についてはカスタマーハラスメント対応マニュアルの整備の必要性が導かれます。各事業者においては、カスハラ対策法の施行前にカスタマーハラスメント相談窓口の設置及びカスタマーハラスメント対応マニュアルの整備が必須となります。
どのような点が法改正のポイントか
顧客への罰則ではなく、事業主への義務が中心
カスハラ対策法というと、例えば刑法などのように、カスタマーハラスメントを行う人に対して「カスハラをしてはいけない」であるとか、カスタマーハラスメントをした人に対して罰則を設ける、というイメージかもしれません。
確かに、法は顧客等に対してもカスタマーハラスメントに対する関心と理解を深めてカスタマーハラスメントをしないように注意を払うように求めています。
しかし、カスハラ対策法の主たる内容はカスタマーハラスメントの被害者となり得る従業員を雇用している事業主に対して様々な措置や配慮を求めるものであるという点です。
例えば、カスハラ相談窓口の設置や、カスハラマニュアルの整備によって、従業員をカスハラから守る各種施策が求められています。
法改正によってどのような事態の発生が予想されるか。
カスハラ対策法の施行によって何が変わるか
カスハラ対策法の施行により各企業が対策をすることによって、結果としてカスタマーハラスメントの数が減り、また、カスタマーハラスメントが発生した場合でも事態が深刻化しづらくなるケースが多くなると思われますし、それが法律の最終的な目的であるといえます。
しかし、現実的にはカスタマーハラスメントを行う顧客は存在し続け、同時に被害を受ける従業員も存在し続けるということも間違いありません。
対策を怠れば安全配慮義務違反を問われやすくなる
その前提で、事業主がカスハラ対策法によって義務付けられている対策を講じていなかった場合、当該事業主は被害に遭った従業員に対する安全配慮義務違反を問われる可能性が高くなるといえます。
すなわち、カスタマーハラスメント被害に遭った従業員が精神疾患等に罹患するなどした場合、業務上被った被害であるため業務起因性は認められるとしても、使用者として事業主に安全配慮義務違反が認められるかは判断の難しいところでした。
ところが、カスハラ対策法によって事業主に事前・事後におけるカスハラ対策が求められるようになった以上、カスハラへの対処を怠ることは直ちに安全配慮義務違反につながるリスクを伴うものとなったと考えられるのです。
カスハラ対策は労働紛争の端緒となる
すなわち、カスハラ対策法の施行によって、カスタマーハラスメント対策は単なる企業防衛の議論に止まらず、労働紛争の端緒となることが予想されるのです。
カスタマーハラスメントにお悩みの企業は、まずは一度ご相談ください。
よくある質問
Q1. カスハラ対策の義務化はいつからですか?
2026年10月1日からです。この日に改正労働施策総合推進法(カスハラ対策法)が施行され、事業主のカスハラ対策が法律上の義務となります。
Q2. 中小企業や個人事業主も対象ですか?猶予期間はありますか?
労働者を1人でも雇用していれば、企業規模を問わずすべての事業主が対象です。パワハラ防止法のような中小企業向けの猶予期間は設けられておらず、大企業も中小企業も2026年10月1日から同時に義務が発生します。
Q3. 対策をしなかった場合、罰則はありますか?
措置を講じなかったこと自体に直接の刑事罰はありませんが、企業名を公表されるリスクがあります。(労働施策総合推進法第42条第2項)厚生労働大臣による助言・指導・勧告の対象となり、勧告に従わない場合には企業名が公表され得ます。加えて、対策を怠った状態で従業員が精神疾患を発症した場合、労働契約法第5条の安全配慮義務違反として損害賠償責任を負う可能性があります。実務上はこちらのリスクの方が重大です。
Q4. どこからがカスハラになりますか?正当なクレームとの違いは?
「社会通念上許容される範囲を超えた言動」かどうかが基準です。法律上、カスタマーハラスメントとは、顧客・取引先・施設利用者等の言動であって、業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超え、労働者の就業環境を害するものと定義されています。商品の欠陥に対する指摘そのものは正当なクレームですが、長時間の拘束、人格否定、土下座の要求、SNSでの晒し行為などは許容範囲を超えると判断されます。
Q5. 具体的に何をすれば義務を果たしたことになりますか?
厚生労働省の指針が示す5類型の措置を講じる必要があります。①事業主の方針等の明確化と周知・啓発、②相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備、③事後の迅速かつ適切な対応、④対応の実効性を確保するための抑止措置、⑤これらとあわせて講ずべき措置です。実務上は、②から相談窓口の設置が、④から対応マニュアルの整備が導かれるため、この2つが施行までに必須の準備となります。
義務化に向けて、まず何から始めるか
指針が求める措置のうち、最も手間がかかり、かつ先送りしにくいのが相談体制の整備です。方針の策定は書面で足りますが、相談窓口は「誰が受けるのか」を決めなければ機能しません。
社内に窓口を置く場合、担当される方には次の負担がかかります。
- カスハラに該当するかどうかの法的な線引きを、その場で判断する必要がある
- 相談を受け続けることで、担当者自身が二次的に疲弊する
- 社内の人間が受けるため、相談者が「話しにくい」と感じることがある
当事務所では、この相談窓口を弁護士が外部から引き受けています。詳しくはカスハラ相談窓口の設置|社内に置くか、弁護士に任せるかをご覧ください。
【施行日まで】中小企業向け特別プラン
2026年10月1日の施行に向けて、1社でも多くの企業に窓口を整えていただくため、従業員30名以下の企業様を対象に特別プランをご用意しました。
月額1万円(税別)/ 1年間据え置き
- 対象:従業員30名以下の企業様
- 申込期限:2026年10月1日まで
- ご契約から1年間は月額1万円のまま。施行日を過ぎても値上げはいたしません
- 1年経過後は通常料金(従業員数に応じ月3万円~)に移行します
サービス内容は通常プランと同じです。相談窓口の設置から、従業員の方からのご相談対応まで、弁護士が直接お受けします。
カスハラ義務化対応についてのご相談(無料)
「何から手をつければよいか」の段階からご相談いただけます。下記フォームからお気軽にお問い合わせください。通常1営業日以内にご返信いたします。
お急ぎの場合は、お電話でも承っております。
03-5447-7735(平日9:00~18:00)
