幹部・従業員研修の必要性

クレーマー・カスタマーハラスメント対応においては、クレームに対して初期対応を行う現場の従業員は勿論、当該従業員からの報告を受けて二次対応を行う幹部従業員に対する教育・研修が非常に重要となります。

顧客がクレーマー化し、クレーム対応案件が深刻化した場合、最終的に弁護士が対応して事案解決にあたることは有効であり、当事務所においても多くの案件で対応させていただいています。

もっとも、クレーム対応の現場においては、悠長に弁護士に相談して対応方法を確認している時間がない場合も多く、従業員がその場で取り敢えずの方針・今後の進め方についての説明等に関して判断を求められる場合が少なくありません(当事務所においては、従業員から直接のLINE相談システムを設けておりますが、クレーム発生と同時の回答や対応を求められる事案において、相手方の目の前でLINE相談をするのが困難な場合も少なくありません)。

また、クレーマー事案が発生する度に弁護士に依頼するということになれば、クレームが発生した場合の社内のマインドセットとして、何かあったら弁護士に依頼すればよいという意識が蔓延し、顧客に対する接遇が雑になり、場合によっては本来生じるべきでない二次クレームの発生を招くことがあります。
なお、当事務所のクレーム対応総合顧問契約であれば、クレーム対応に関する都度の弁護士費用は発生しませんので、弁護士費用は考慮する必要はありません。もっとも、弁護士事務所によっては、相談を超えて直接相手との交渉を要する場合には都度弁護士費用が発生する場合もあります。その場合には、社内のマインドセットのみならず、常に費用対効果も意識する必要があります。

そこで、クレームが発生した場合に、企業内での解決能力を醸成して二次クレームを発生させないという観点から、自社内でのクレーム対応能力の醸成が不可欠といえます。そこで、幹部・従業員に対する研修が必要となります。

また、幹部従業員と現場従業員との間では、クレーム対応において求められる役割・権限が異なってきますので、当然ながら研修内容も異なります。

クレーム対応において肝心なポイントは、クレーム発生時における組織としての対応者・対応フローをはっきりとさせておくこと、当該対応者毎の対応マニュアルを整備すること、各対応者が当該マニュアルに従って自らの守備範囲を明確に認識して対応し、必要に応じて次のレイヤーの担当者に対応を引き継ぐことです。

例えば、小売店のアルバイト従業員がクレーム対応にあたった場合、当該従業員には二次クレームを発生させないという意味で初期対応の仕方(最初の謝罪の仕方、発言の仕方、約束してよい事項とダメな事項の峻別等)については徹底した研修を施す一方、クレーム対応方針についての実質的な判断権限は与えないことが望ましいです。
そこで、従業員研修においては、各人の立場においてどのような権限が与えられており、どのような役割が期待されているのかという観点からの研修も必要になってきます。

他方、当該小売店の店長であれば、自らクレームを受ける場合もあれば、既にアルバイト従業員が初動対応をした案件について報告が上がってくる場合もあります。既にアルバイト従業員が対応している事案の場合、当該クレーム主体に対応する前に、まずは初動対応者に確認するべき事項があります。当該アルバイト従業員が、クレーム主体に対して何かの約束をしている可能性もあれば、当該アルバイト従業員の発言に対して怒っている可能性もあるからです。
また、店長が行うクレーム対応は、当然ながらアルバイト従業員のそれとは異なり、場合によっては返金対応も含まれるかもしれませんし、慰謝料の支払いは含まれないかもしれません。
この場合にも、店長として何であれば判断・決定してよく、何は上長(例えば本社法務部)に相談しなくてはいけないのかという点を明確に認識させておくことが肝要なのです。

以上のように、従業員の属するレイヤーによって求められるクレーム対応における判断能力・権限が異なるため、そのための研修内容も異なってきます。

幹部・従業員研修を実施することにより、組織としての企業全体のクレーム対応力を高めることで、結果として健全な企業文化の醸成・従業員のモチベーションアップにつながります。

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