従業員に対する安全配慮義務・健康配慮義務とは

労働契約法はその第5条において「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と規定し、使用者の労働者に対する安全配慮義務を定めています。

この安全配慮義務とは、使用者が従業員を自らの指揮命令監督下においてその指示する場所や設備を用いて業務に従事させるものである以上、当該業務の遂行過程において従業員が怪我をしたり、命を落としたりすることのないように従業員の安全に注意することを求めるものです。

すなわち、使用者は従業員に対して、ただ労働の対価としての賃金を支払う義務を負えばよいということではなく、従業員の安全に配慮する義務をも負っているということになります。

そして、安全配慮義務をさらに一歩進めた考え方として、使用者が従業員の業務上の事故等から守るという安全配慮のみならず、従業員が業務に起因して病気になる等して健康を害することを防止するべきであるという健康配慮義務という考え方が生じます。

例えば従業員が過重な業務やセクハラ、パワハラによって精神に不調をきたした場合に、使用者として当該事態の発生を予見でき、且つ避けることができたのにもかかわらず当該事態を避けることを怠った場合、使用者の従業員に対する健康配慮義務の違反が認められます。

そして、従業員がクレーマーによるカスタマーハラスメント被害に遭っているにもかかわらず、使用者として従業員をクレーマーから防衛することを怠った場合、従業員への健康配慮義務の違反となる可能性があるということになります。
なぜなら、クレーマー・カスタマーハラスメント対応は業務の一環として行われるものであるところ、これらの対応は従業員に対して多大なストレスを与えるものであり、当該クレーム対応に起因して従業員が精神疾患をはじめとした健康被害を生じることは往々にしてあり得るからです。

以上から、使用者としてクレーマー・カスタマーハラスメント対応は、従業員に対する安全配慮義務・健康配慮義務という観点からも重要といえます。

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