コロナ禍でのクレーム・カスタマーハラスメント対応

 新型コロナウィルス感染症拡大防止のため、緊急事態宣言が発令され、行動が大幅に制限されることで消費者の不安や不満が募り、それらは様々な形で表れています。

 2021113日、消費者庁が発表した「緊急時の消費者行動について」によると、新型コロナウィルス感染症拡大時の消費者行動として、店頭での消費者による行き過ぎた言動が挙げられています。事業者アンケート調査では、消費者から意見を受けた経験があるとの回答は、30社中17社で、暴言等に発展するケースもあるとのことでした。

 新型コロナウィルス感染症により、カスタマーハラスメントの被害は増加傾向にあります。このような状況下で企業に求められる対応について、具体的な事例を踏まえて解説します。

コロナ禍でのクレーム内容

・コロナの影響でビニールシートやマスクをしているため、お互いに声が聞き取りづらく、何度か同じやり取りをした時に大きな声をだして暴言を吐かれた。

・コロナの対応について三度電話あり。マスクをしないバカな客は帰らせろ、不要不急の買い物ではないバカな客は帰らせろ、バカな若者は店に入れるな。

・コロナ禍において店舗が営業していることに対して、営業しないように求められた。

・新型コロナウィルス陽性者が発覚した店舗に行った。どうしてくれるんだ?責任者をだせ!担当がはじめ対応したが、話が進まず引き継ぎ話を聞いたが、変わらずどうしてくれるんだ!?家族の命がかかってるんだぞ!の繰り返しで威圧を繰り返し続けられた。

・外来受付勤務中に外線電話を受けると相手が急に『そこにコロナが入院しているだろう』と聞かれた。個人情報はお答えできません。と回答すると、『入院しとるかどうか聞いとるだけだ。個人情報じゃないだろう』と激昂された。院内の情報も教えられません。と回答すると、『そんな事も言えんのか。安心してそちらに行けん。病院なのにわしらの安全はどうなるんだ。』と一方的に罵倒された。申し訳ございません。と謝り続け『もうええわ』と電話を切られた。

・病院入口での検温(コロナ感染拡大により実施開始)を拒否して入ってきた予約患者様を対応。検温のご協力をお願いしたが、大声で拒絶。「熱はない。マスクしたくない。検温するぐらいなら診察を受けないで帰る。」と。帰ろうとするところを引き留め、複数名で説得したがなかなか応じず。上司も対応に加わり、ようやくご協力頂けた。

・マスク着用をお願いしたが、表に出ろと外に連れて行かれました。厚生労働省が暑い時 は外せと言っている、熱中症になったら責任を取ると一筆書け、マスクしている間うちわで仰ぎ続けろ、等、屁理屈を怒鳴って言い続けていました。暑い中、外で30分怒鳴られ疲れました。

出典:桐生正幸 東洋大学社会学部 『悪質クレーマー対策(迷惑行為)アンケート調査 分析結果』

コロナ禍でのクレーム・カスタマーハラスメント対応

 コロナ禍でのクレームはマスクの着用等、各人のマナーやルールに関するものが多く見受けられます。従業員のマスク着用はもちろんのこと、お客様にマスクの着用をお願いすることは、施設管理者として、感染拡大防止するため、他のお客様や従業員に対する安全配慮義務の一環として必要となります。

 既に店舗入り口や店内にマスク着用のお願いのPOP掲示、非接触型システムの導入、専任スタッフの配置等の取り組みをされている企業がほとんどかと思います。

それでも、お客様にマスク着用を拒否された、入店を拒否する等の毅然とした対応が必要となります。

また、マスク着用に関して長時間クレームを述べ続け、スタッフが対応のため拘束される等の被害に遭った場合、程度によってはこれ以上の対応は致しかねるとして対応そのものを拒否することも必要となります。

 次に多いクレームが「コロナに感染したらどうしてくれるんだ」などの新型コロナウィルス感染に関連するクレームです。自社で運営している施設内において、クラスターの発生等により感染拡大することを防止するため、事業者としてどのように対応するべきでしょうか。

この点、各事業者の業種や事業内容によって企業が負うべき安全配慮義務の程度も異なってきます。例えば、コロナウイルスの患者を受け入れている医療機関と雑貨を販売している小売店とでは、求められる感染防止対策の程度が異なることはイメージが湧くところかと思います。

そこで、前提として自社の業界・業務実態から平均的な感染防止対策を講じるべきことは必須といえます。

そのうえで、抽象的な感染の可能性を理由に過剰な要求やクレームを出してくる者に対しては、毅然として対応するのが適切です。

まずは、自社の感染防止対策が必要十分な水準に達しているかの確認が必要となります。

  世界が歴史的な危機に直面している中、経済活動を維持しながら従業員を守るために、経営者、担当者の皆様は並々ならぬご努力を続けておられることと思います。

 そのような中、従業員の皆さんが消費者のストレスのはけ口として疲弊することのないように、企業として防衛する体制を構築することも重要となります。

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