カスハラ対策法

法改正内容

2026年10月、カスハラ対策法が施行されます。

カスハラ対策法とは、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)等を一部改正したものです。

カスタマーハラスメントを防止するため、事業主に雇用管理上必要な措置を義務付け、国が指針を示すとともに、カスタマーハラスメントに起因する問題に関する国、事業主、労働者及び顧客等の責務を明確化しました。

なお、カスハラ対策法において、カスタマーハラスメントとは、職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者の言動であって、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより当該労働者の就業環境を害することをいうとされています。

具体的には誰が、何を義務付けられるのか

義務者 内容
事業主(会社) 労働者の就業環境が害されることのないよう、労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、労働者の就業環境を害する当該顧客等言動への対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置その他の雇用管理上必要な措置を講じる義務(法33条1項)
労働者がカスハラに関する相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない義務(法33条2項)
他の事業主から当該他の事業主が講ずる雇用管理上必要な措置の実施に関し必要な協力を求められた場合には、これに応ずるように努めなければならない義務(法33条3項)
労働者の就業環境を害する顧客等言動を行ってはならないことその他当該顧客等言動に起因する問題(以下「顧客等言動問題」)に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる措置に協力するように努める義務(法34条2項)
自らも、顧客等言動問題に対する関心と理解を深め、他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない義務(法34条3項)
(厚生労働大臣は)事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定める(法33条4項)。
当該顧客等言動問題に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、各事業分野の特性を踏まえつつ、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならない(34条1項)
労働者 顧客等言動問題に対する関心と理解を深め、他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる措置に協力するように努めなければならない(法34条4項)
顧客等 顧客等言動問題に対する関心と理解を深めるとともに、労働者に対する言動が当該労働者の就業環境を害することのないよう、必要な注意を払うように努めなければならない(法34条5項)

雇用管理上講ずべき措置

法によって求められる義務のうち、特に、事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関し雇用管理上講ずべき措置の内容が重要であり、厚生労働省のガイドラインに詳細が記載されています。

  1. 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
  2. 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  3. 職場におけるカスタマーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
  4. 職場におけるカスタマーハラスメントへの対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置
  5. ①~④までの措置と併せて講ずべき措置

これらのうち、②についてはカスタマーハラスメント相談窓口の設置が、④についてはカスタマーハラスメント対応マニュアルの整備の必要性が導かれます。各事業者においては、カスハラ対策法の施行前にカスタマーハラスメント相談窓口の設置及びカスタマーハラスメント対応マニュアルの整備が必須となります。

改正法のポイント

カスハラ対策法というと、例えば刑法などのように、カスタマーハラスメントを行う人に対して「カスハラをしてはいけない」であるとか、カスタマーハラスメントをした人に対して罰則を設ける、というイメージかもしれません。
確かに、法は顧客等に対してもカスタマーハラスメントに対する関心と理解を深めてカスタマーハラスメントをしないように注意を払うように求めています。
しかし、カスハラ対策法の主たる内容はカスタマーハラスメントの被害者となり得る従業員を雇用している事業主に対して様々な措置や配慮を求めるものであるという点です。

法改正によってどのような事態の発生が予想されるか。

カスハラ対策法の施行により各企業が対策をすることによって、結果としてカスタマーハラスメントの数が減り、また、カスタマーハラスメントが発生した場合でも事態が深刻化しづらくなるケースが多くなると思われますし、それが法律の最終的な目的であるといえます。
しかし、現実的にはカスタマーハラスメントを行う顧客は存在し続け、同時に被害を受ける従業員も存在し続けるということも間違いありません。
その前提で、事業主がカスハラ対策法によって義務付けられている対策を講じていなかった場合、当該事業主は被害に遭った従業員に対する安全配慮義務違反を問われる可能性が高くなるといえます。
すなわち、カスタマーハラスメント被害に遭った従業員が精神疾患等に罹患するなどした場合、業務上被った被害であるため業務起因性は認められるとしても、使用者として事業主に安全配慮義務違反が認められるかは判断の難しいところでした。
ところが、カスハラ対策法によって事業主に事前・事後におけるカスハラ対策が求められるようになった以上、カスハラへの対処を怠ることは直ちに安全配慮義務違反につながるリスクを伴うものとなったと考えられるのです。
すなわち、カスハラ対策法の施行によって、カスタマーハラスメント対策は単なる企業防衛の議論に止まらず、労働紛争の端緒となることが予想されるのです。

カスタマーハラスメントにお悩みの企業は、まずは一度ご相談ください。

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