小学校教諭の自殺に公務起因性が認められた事案。

裁判年月日

東京地方裁判所平成28年2月29日判決

概要

 小学校教諭の自殺に公務起因性が認められた事案。

クレーム内容

 万引き疑惑について児童の保護者との電話対応を指示されたところ、保護者から大声で怒鳴られるなど激しく抗議された。

その後、当該児童が実際に万引き事件を起こした。

裁判内容

 万引き疑惑事件に関し、副校長や主幹でも対応することができず、校長が謝罪せざるを得なくなるなど周囲も巻き込んだ問題になったことをはじめとして、単発的な出来事と評価することはできない一連の出来事について、担任になって間もない新任教諭にとって、相当の精神的負荷を与える事象であったものと認められるとした。 万引き疑惑については校長から情報を提供され対応を求められたものであるが、児童の触法行為の疑いという事柄の性質上、極めて慎重な配慮を必要とし、確たる根拠がなければ児童の保護者等から強烈な反発を受けることも容易に予想され、経験の乏しい新任教諭に判断を任せるのは荷が重く、その対応には上司らから手厚い指導が必要であると考えられるとも判示された。

コメント

 本件のように、教師に対して過剰に攻撃的な態度に出る等いわゆるモンスターペアレントと評することができる対応をとる保護者が多くみられます。また、そもそも業務内容として判断及び対応方法に困難を伴う業務があります。

このようなクレーマーや対応困難な事案対応を現場スタッフ、殊に新人スタッフに任せることにより、当該スタッフらが強度の心理的・精神的負荷を感じた結果、精神疾患を罹患してしまう事例が散見されます。

 本件は直接安全配慮義務が問題とされた事案ではありませんが、使用者としては、このような事案において、安全配慮義務の履行として不当なクレームから従業員を守る必要があります。

そのためには、不当クレームに発展しやすい事案が発生した場合の対応マニュアルを準備し、場当たり的な対応とならないようにしておくことが肝要であるといえます。

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