通信販売店に対する商品引渡請求事件

裁判年月日

東京地方裁判所H251225日判決 

概要

某ブランドのブランド名のアクセサリーや宝飾品の小売りを行う会社への商品引渡請求事件。被告ECサイトでは通常、Aという商品(745500円)とBという商品(47250円)をそれぞれ販売しているが、H25531日夜から翌61日にかけて、Bの販売用画面にAの写真が表示されるようになっており、注文の際の選択商品の表示画面、注文内容の確認画面、注文後の注文状況の確認画面も同様であった。

原告らはH2561日未明、上記の状態の被告ECサイトでBを1個ずつ注文した。

被告はH2562日、原告らに対してBを1個ずつ送付した。

 クレーム内容

原告らは被告ECサイトでAの画像が表示された各47250円の商品を各1個購入する手続を取った。注文内容確認画面等の各画面ではAが表示されており、何度も確認しながら注文を確定させた。商品説明の文は、商品のイメージを簡単にコメントした程度のものであり、購入手続中には商品説明は表示されず、画像のみでの確認であった。

したがって、対象商品として表示されていたAについて代金47250円でそれぞれ売買契約が成立したと主張している。

 店側の対応

被告はECサイト上、Bについての特徴について述べる文を表示しており、購入手続上の画面上も、Bという名称で商品と特定していて、原告はこれを注文したのだから、売買契約の対象はBであると主張した。

原告らの商品購入の意思表示も被告に到達した内容は、Bの商品名とその商品番号のみであり、原告らが確認したというAの写真は一切表示されていないため、原告と被告との間にAについての売買契約は成立しないとして原告らの請求を拒絶した。

裁判結果

原告らの請求はいずれも理由がなく、棄却を免れない。

 コメント

原告のECサイト上での注文(売買契約の申込の意思表示)は、受け手である被告に対しては、Bの注文として解釈する他ない一義的な内容(注文番号、注文者氏名、注文日時が一覧で文字により表示されていた)であり、「B1個を47250円で購入する」というものでした。

裁判所は他者への伝達行為という意思表示の本質からすれば、隔地者間の意思表示の内容確定は、受信者側に到達した内容を基礎として行う必要があるため、原告らの主張は採用できないとしています。

ECサイトにおいては、サイトの不具合によって購入対象商品とは異なる製品が画面上表示されてしまうといった事態が生じ得ますが、その場合にいずれの商品について売買契約が成立するのかという問題が生じます。

本裁判例の考え方に従えば、いかなる内容の売買契約が成立したかは、到達した意思表示の内容、すなわち注文確認画面や送信メッセージに記載された内容によって定まることになります。

仮にサイトの不具合で異なる写真が表示されていたとして(スクリーンショット等を示してくることが考えられます)、写真通りの商品を引き渡すようクレームがあった場合には、注文確認画面等でいかなる内容の注文が成立しているかを確認し、成立した契約の内容を確認することが肝要となります。

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