宝石店に対する損害賠償請求事件

裁判年月日

東京地方裁判所平成24年3月9日判決

概要

 原告は妻のための結婚指輪を購入するために、妻を伴って被告会社が経営する店舗に訪問し、実際に指輪を装着して指輪の装着感に問題がないことを確認したうえで指輪を購入した。その後、原告が被告に対し、指輪が入らないことから修理を求める連絡をしたが、一連の被告の接客態度が不適切であることから精神的損害を被ったとして、原告が被告会社及び店舗マネージャーに対し、損害賠償を求めた事案。

クレーム内容

①指輪購入時にリングサイズの号数表記について説明をしなかった。

②修理完了時に直ちに連絡をしなかった。

③原告が被告に対して指輪が入らない旨連絡した際、サイズ調整にて対応するとの前言を覆すなど的確な説明に欠けていた。

④原告のもう1つ買えという事かという問いかけに対し、結果的にそうなると肯定と受け取れる回答をした。

これらの被告の接客対応から精神的損害を被ったとして200万円の慰謝料の支払いを求めた。

店側の対応

①原告が指輪を購入する際に、リングサイズの表記についての説明はしなかったが、実際に指輪を装着し、装着感に問題がないことを確認した。

②修理後の連絡は、修理が完了した指輪が店舗に戻ってきてから5日後であった。

③原告から指輪が入らないという連絡を受けた被告従業員は、誤ってサイズ調整が可能であると回答したが、その後その発言を訂正し、指輪はサイズを小さく調整することしかできないこと、結婚指輪用に刻印をしているため返品・交換ができないこと等を説明した。

④原告は被告従業員の説明を受け、「もう1つ買えということか」と問いかけをしたことから、結婚指輪が欲しいという趣旨であれば、結果的に他の指輪が必要となるという回答をした。

裁判結果

 被告従業員の一連の接客対応に不法行為を構成する違法性は認められず、不法行為は成立しないことから、原告の請求を棄却する。

コメント

 本件裁判例においては、被告従業員の種々の対応について不法行為であるとの主張がなされましたが、いずれの従業員の対応についても不法行為を構成する違法性があるとはいえないとして原告の請求を棄却したものです。

原告のクレームは、被告従業員の発言の変化や回答について問題とする内容といえ、クレーム対応現場においては類型として多く、激化しやすいクレームといえます。

また、本件のように、顧客にとって思い入れのある商品やサービスに関するクレームは重大化しやすい傾向にありますので、初動対応を間違えないことが肝要です。

殊に、対応内容そのものは客観的に問題がないとしても、時系列で追った場合に対応に一貫性がないことで、感情的なクレームを招来する恐れがある点には注意が必要です。

 本件におけるような事態を防止するためにも、各企業におけるクレーム対応マニュアルを従業員に周知徹底すること、対応マニュアルに沿った一貫した対応を教育することが重要です。

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