スポーツクラブに対する損害賠償請求事件

裁判年月日

東京地方裁判所H26613日判決

概要

 被告の開設運営するスポーツクラブにおいて、原告が痛みを訴えたにもかかわらず、トレーナーBからトレーニングを強要されたために、腰椎椎間板障害等を発症したとして損害賠償を求めた事案。

 クレーム内容

 原告はレッグプレスの直後及びその後のトレーニングの際に、左腰から足先までの痛みを訴え続けたが、トレーナーBは原告の身体の状態について細かく尋ねることもせず、原告に対し、ただ「負荷がかかっているだけ。」等と言って、まともに取り合おうとしなかった。

トレーニングを続けていくうちに、原告の身体の状態は悪化し、跛行状態も悪化したが、Bは従前と態度を変えず、自分の指導するトレーニング方法の正当性を言い続けるだけだった。

店側の対応

 被告はエリアマネージャーCの名前で下記内容が記載された文書を交付した。

・事実関係を明確にするために、直接会って話をしたい。

・被告のトレーナーが実際に不適切な指導をした事実があり、原告が当該指導により負傷、通院治療を受けたという医師の診断書があれば、被告は速やかに実費及び交通費の全額を支払う。

 裁判結果

 原告が被告スポーツクラブに通っている回数や、その際のトレーニング内容、原告の発言等を時系列に沿って詳細に認定をした上、原告は痛みを訴えた後もトレーニングを引き続いて実施し、原告としては痛みの最大の原因であると考えているトレーニングであるレッグプレスも実施している。いったんキャンセルした予約を再度入れてトレーニングするなど不合理かつ不自然な行動は説明がつかない。原告の痛みを感じた時期・タイミング・部位,痛みの内容・程度,痛みを感じた後の対応に関する原告の供述は,それ自体が,いずれも信用できないとして、請求を棄却した。

コメント

 パーソナルトレーニングを原因として、体調不良になった、負傷したと訴えるクレームは少なくありません。このような事案においては、具体的にどのようなトレーニングがなされたのか、指導は適切であったのか、当該トレーニングによって受傷したことを前提にした原告の行動は合理的か、等の事実が重要となってきます。

そして、事業者側としては、恒常的にトレーナーがどのような指導を行っていたのかを記録化することで、後に行った指導内容で虚偽主張されることを防止することができます。また、クレーム主体の言い分が不自然に変遷していないかといった点について、後に検証できるように、クレーム発生時からヒアリング内容を正確に記録化することも重要となります。

なお、スポーツクラブに関連する問題として、パーソナルトレーニング等ではなく、一定の危険を伴う競技の指導を目的とするジム(格闘技ジム等)においては、一定の負傷等は当該競技に当然伴う危険であるといえます。利用者としても、当該競技の危険性を認識したうえで入会しているものと合理的に考えられるところではありますが、事業者としても当該危険について周知するのみならず、入会契約等においてその危険性を十分に理解している旨を確認すると共に、重大事故に備えて保険に加入することは必須といえるでしょう。

 

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