ファーストフード店に対する損害賠償請求事件

裁判年月日

名古屋地方裁判所H11630日判決 

概要

顧客がファーストフード店で購入したジュースに混入した異物により喉頭部を負傷したことを理由に損害賠償を求め、慰謝料5万円、弁護士費用5万円が認容された事例。

 クレーム内容

原告は購入したセットを会社へ持ち帰り、ジュースを飲んだところ、喉にガラスの破片のようなもの(ただし、軽いもの)が刺さる痛みを感じ、喉から出血して嘔吐した。

 会社側の対応

 原告から国立病院の診断書の提出を受け、翌日に話し合いを行った。被告はオレンジジュースの仕入れ先は、その納入に際し、金属探知機によるチェックを行っているし、被告はそれをオレンジジュースマシンに入れ、紙コップに抽出し、蓋をして、紙袋に入れた状態で、販売しているのであるから、直径七ミリメートルのストローを通過するような異物は故意でない限り混入することはあり得ないと、ジュースと原告の受傷との因果関係を否定した。 

裁判結果

 裁判所は、原告の受傷が本件ジュースを原因とするものかという争点について「<1>原告は、本件ジュースを飲んだ直後に、喉に受傷していること、<2>被告が本件ジュースを販売してから、原告がそれを飲むまでの間に、本件ジュースに、喉に傷害を負わせるような異物が混入する機会はなかったと考えられること、<3>原告は、本件受傷当時、歯科治療を受けておらず、また、ダブルチーズバーガーやフライドポテトを全て食べ終わってから本件ジュースを飲んでおり、原告の口腔内にあらかじめ異物が存在していたとは考えられないことなどからすれば、本件受傷は、本件ジュースに混入していた異物を原因とするものと認められる」として、因果関係を肯定した。

 原告は、本件受傷後、吐血し、医師により、救急車で国立病院へ運ぶのが相当であると判断されるほどの状態であったこと、国立病院においても、制吐剤等の点滴を受けており、本件受傷により、相当なショックを受けたものと認められること等を前提に、原告は本件受傷により、相当な精神的・肉体的な苦痛を被ったものとして、これに対する慰謝料としては5万円と、弁護士費用として5万円の合計10万円の支払いを認めた。 

コメント

 本件は、クレーム対応における会社の判断という意味では非常に難しい事案であるといえます。

この点、飲食店においては、飲食後に腹痛になったというクレームをはじめ、種々のクレームが生じます。店舗側としては、その一つ一つについて顧客の要望・請求に応じるかという判断は勿論のこと、クレーム対応の過程に不備があることを原因とする二次クレームも防止しなければなりません。

 本件において被告会社が主張した通り、当該ジュースの搬入経路、提供までの保管方法からすれば、到底危険物が入り得ないという判断の下、任意交渉の段階では損害賠償請求に応じないという対応も一つの選択といえます。

もっとも、インターネットにおける口コミ等による炎上が問題となっている昨今の状況からは、企業のレピュテーションリスクを防止する観点から、受傷原因が不明である(裏を返せば提供物が原因となった可能性も否定できない)状況下においては、紛争拡大やレピュテーションリスクの観点から任意交渉段階での和解を目指し、口外禁止条項等を入れることでそれ以上紛争が拡大しないように判断すべき場面も存在します。

いずれにしても、このような判断が難解な事案においては、弁護士に相談のうえ総合的な影響を考慮した対応方針を決定するべきであるといえます。

 

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